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風土性調査レポート 風土性調査レポート

私たちが暮らしている地域の足元を見つめ直してみませんか? 〜小山市11地区「風土性調査」レポート〜 私たちが暮らしている地域の足元を見つめ直してみませんか? 〜小山市11地区「風土性調査」レポート〜

20年後30年後の⼩⼭の未来を描くために、
まずは私たちが暮らしている地域の⾜元を⾒つめ直すことから。

⾵⼟性調査は、⼩⼭市全体やそれぞれの地域の⼤地の成り⽴ちや
⾃然、⽂化、伝統、地域のコミュニティのあり⽅などを、
フィールドワーク、⽂献調査、聞き取り調査、
アンケートなどを通して描き出し、
その総合的な地域の姿を「⾵⼟」として
地域の皆さんと共有するための取組みです。

⾵⼟性調査は、⼩⼭市と調査の専⾨家、そして地域のみなさまと共に、令和3年度の先⾏調査・⽣井地区に続き、令和6年度までの3年間で11の地区の調査を順次進めていきます。ここでは、その報告をお伝えしていきます。

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小山地区 Oyama

調査実施:令和4年8⽉〜12⽉
思川に面した宝木台地の斜面林を背に、御殿広場から小山駅周辺を見る。小山地区を織りなす多様な要素の代表的なものが一堂に会した風景。2020/09/22

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田園環境都市ビジョンづくりに向けた小山市11地区の風土性調査  
小山地区 報告レポート「基礎資料・概要版」
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小山地区の風土性調査について
「風土」とは、地域の自然に対して人間が暮らしと生業を通して、働きかけることでかたちづくられる、人々が生きる環境のこと*を言います。人々が生きる環境、それは私たちの身近な世界、生活世界のこと**でもあります。
地域の風土(生活世界)を 、あらためて把 握するために 、
①地理学や民族学的な視点で地域を見て歩く「踏査」(現地調査)
②アンケートや聞き取りを行う簡易社会調査
③小山市史や研究論文などにあたる文献調査
これらを組み合わせた風土性調査 を実施しています。

この概要版は、その調査成果の報告レポート「小山地区 基礎資料」から主なトピックを抜粋し、一部に加筆を加えたものです。報告書の完全版(A4版83ページ)やアンケート集計結果報告書(同・61ページ)は、最後に紹介するリンクから閲覧ができます。

*註1:出典 薗田稔編『神道』(弘文堂、1988年)
**註2:出典 アルフレッド・シュルツ、トーマス・ルックマン『生活世界の構造』(筑摩書房、2015年)

1|小山地区の概況

小山市の基本地形と小山地区の位置

西から思川低地、宝木(たからぎ)台地、鬼怒川低地が並び、宝木台地の東を鬼怒川、西を思川が流れています。これらの低地と台地にまたがる小山市の中央部に、小山地区は位置します。

出展|国土地理院   地理院地図   http://maps.gis.go.jp/(廣瀬改変2022年)

小山市の中央部に位置。
 地区の西側は
台地斜面林と思川に縁どられます。

小山地区は、明治22年(1889)の町村制施行に際し小山町、稲葉村、神鳥谷(ひととのや)村が合併した小山町をもととし、面積は13 .93 km2 で市の面積の約8.1%を占めます。地区の人口53,187人は、市の人口の約31.7%に当たります(令 和3年4月1日現在。「令和3年度版小山市統計年報」より)。住宅地を主に、商業地と工業地が含まれた小山地区は、ほぼ市街化区域に指定され、小山市の文字通りの中心市街地といえます。

次でふれますが、小山市の範囲は古来交通の要衝となってきました。その上に、宝木台地と思川低地の高低差が最も大きいところに祇園城が築かれ、城下町が整備され、近代に入ると町の東側に鉄道が通されて小山駅が開業し、地区は今日に至っています。

思川に面した台地の斜面の多くは木々に覆われます。比較的自然度の高い川、樹林と中心市街地とが対比した景観は、特徴的です。

2|地形と交通

河川の氾濫が繰り返されてつくられ、もとは主に湿地であった二つの低地と違い、宝木台地の上は道を通すのに便利でした。近世には陸上交通とともに河川交通も栄えるなど、地形と交通が密接にかかわってきた地域の中心を、小山地区は成してきました。

日光道中絵図巻5より祇園城周辺が描かれた部分を拡大する。出典|「日光道中絵図巻5   _野木宿より小金井宿まで」国立公文書館デジタルアーカイブ https://www.digital.archives.go.jp/item/1603304 (2022-12-10 参照) CC0 1.0 Universal (CC0 1.0)

地形上、小山市は
交通の要衝としての位置を占め、
小山地区はその中心に。

古代の下野国は、当時の律令国家が支配した地域の東北端に位置しました。そのため、中央と地方の諸国を結ぶ幹線の交通路、五畿七道(ごきしちどう)の一つである東山道(とうさんどう)、小山市域の北側で思川低地を東西に通され、宝木台地上を北北西へと伸ばされました。中世には、幕府のある鎌倉と東国武士の本領を結ぶ連絡路が整備され、小山市域では台地の上に奥大道(おくだいどう。鎌倉街道のひとつ)が通されました。また、祇園城が築かれ、城下町が建設されています。近世に入ると奥大道にかわって日光道中(日光街道)・奥州道中(奥州街道)が整えられ、西側に平行する思川を利用した河川交通と組み合わせて使われました。

近代には、河川交通は鉄道交通に置き換わり、その後自動車交通が台頭しますが、奥州道中を継承する国道4号とその東側に平行する東北本線、東北新幹線を中心に小山市は今日も交通の要衝としての位置を占め、小山地区はその中心にあるといえます。

3|交通と市街化

低地と異なり道を通すのに向いた台地の上は、街道沿いに置かれた小山宿などの宿場とあわせて一層便利になり、道は使い続けられ、宿場は祇園城の城下町と共に今日の市街地の原形を成しました。

下国府塚(しもこうづか。穂積地区)から見た小山地区 2021/10/06

奥大道、日光道中は、小山市域では思川に沿った台地の縁から少し東側に通されました。北から南へゆるやかに傾く宝木台地には湧き水や雨水に削られてできた南北にのびる浅い谷fiありますが、西側の縁にはほぼ谷はなく、工事の手間を省き直線的に道が通せるためにこの位置が選ばれたと考えられます。そして、この道沿いにもうけられた宿場の東側に東北本線が引かれ、祇園城の城下町の東側で小山駅が開業し、以降小山地区の鉄道から東側で農地や荒地が市街化されました。それは、地域の農業と結びついた製糸・製粉などの工場の立地に始まる工業の発展とも関係しました。

今日、小山市の面積の約19%を占める市街化区域は、このように主として地形と交通の古代からの関係の上に形成されました。小山地区は、ほとんどがその中に位置しています。

城東公園と隣接する並木道(2016/10/31)。地権者が公共用地を出し合う土地区画整理事業も鉄道の西側で始まり、東側では小山駅東で昭和39年(1964)に開始され、城東では昭和45 年( 1970 )から行われました。アンケートの設問【8】「望ましい小山市の都市環境のあり方」への回答なども参考に、こうした公共用地のこれからのあり方を考えてゆく必要もあります。

4|小山地区での暮らしと意識

前半で概略を紹介したような地形や都市の形成の歴史の上に、人々は、どんな意識でどのような暮らしを営んでいるのでしょうか。簡易社会調査では、無作為抽出による郵送アンケート(回答者653名)と、8グループ19名の方々に聞き取り調査でご協力をいただきました。この章では、住民の方々の声も交えながら紹介します。

聞き取り調査全件の書き起こしデータ90,422字から、テキストマイニングという解析ツールでキーワードの抽出を行った結果。大きく表示されている単語ほど語られた回数が多い。
アンケート設問の【6】大切に守っていきたいと考える、小山地区の「小さな自慢」について選択肢から選んで回答する設問のコメント欄に書かれた回答文の自由記述の回答文3,561字から、上図と同様に頻出キーワードを抽出したもの。

4-2  小山地区に暮らす人の出身地や生活圏

アンケートの設問【1】の集計結果をもとに、小山地区で暮らす人々の出身地、移り住んだ経緯や理由、世帯人数 や職業についてまとめました

参照:アンケート集計結果報告書P12より

小山地区は、日本全国各地の出身者、アジア・中南米などを中心とした
諸外国の出身者、首都圏への通勤者、商工業者、学生、高齢者、
子育て世代などが暮らし、小山市11地区のなかでも、
出身地や職業などにおいて住民の構成が最も「多様」なエリアとなっている。

多様なルーツや背景を持つ人々が暮らす小山地区
調査結果では、回答者の77%fi小山市外の出身者で、58%は栃木県外から移り住んだ人。一方、小山地区出身者は17%でした。困りごとを尋ねるアンケート や聞き取り調査では、ゴミ出しのルールが徹底されず景観を損なっていることや、自治会の担当者の苦労fi続いているという話が多くあり、その際に、増えている外国籍の住民の方々や、学生などの単身者、深夜まで営業する飲食店などにルールを理解してもらうことの困難さも語られています。
世帯人数と職業
世帯人数については、2人以下の世帯がアンケート回答者の70%近くを占めていました。また、職業については、小山地区での農業従事者は専業・兼業ともに0名となっています。

参照:アンケート集計結果報告書P10/11 
*調査票には「無職(退職者・主婦・主夫も含む)」と記載   
**同じく「パート/アルバイト」と記載
■集計結果の割合について:%の算出は小数第2位で四捨五入をし、そのまま記載しています。また概要版では「無記入」「その他」の割合を記載していな い場合もあるため、合計が100にならない場合もあります。
小山地区東エリアに設けられた遊歩道。小山地区 基礎資料(風土生調査報告書)「II 踏査および文献調査による報告」より

夫の転勤で小山に引っ越してきて、
子どもの進学が進むにつれ、小山に家を建てた。
居心地が良かったのも理由のひとつ。
小山市に移住した理由(アンケート【1】-7のコメントより

住みやすさと居心地の良さ
アンケートでも聞き取り調査でも小山地区に移り住んだ人の多くから、その理由として「住みやすさ」が多く語られています。5ページで紹介したキーワード分析でも「住みやすい」は上位にあります。住みやすさの要因として(エリアにもよりますが)交通や買い物の利便性、災害の少なさ、都会過ぎない、少し行けば自然もあることなどが挙げられています。

日常の生活圏と、休みの日などの生活圏
生活圏を尋ねたアンケートの設問【2】の結果の一部を紹介します。日常的な生活圏は小山地区内で完結し、休みの日などは他地域へと広がるさまが伺えます。

参照:アンケート集計結果報告書P14/15  *調査票では、栃木市・宇都宮以外の市町として認定。

4-3 守っていきたい、小山地区の小さな自慢

アンケートの設問【6】で「大切に守っていきたい、小山地区の「小さな自慢」は何でしょうか?」と問い、聞き取りをもとに用意した選択肢から3つを選んでもらいました。

全回答者でのデータは上図の通りですが、年代別(20代/30代/40代/50代/60代/70代以上)による集計でも、若干の違いはあるものの多くの人が選択した項目の上位にあまり差は見られません。

地区の地域資源への認知度・関心度
また、アンケートの設問【3】では「小山地区のなりたちの歴史や、近隣に残る城跡や神社や寺の歴史、由緒、祭り等」と「小山地区にある公園、街路樹、平地林など」について、「知っているか」「関心fiあるか」を尋ねました。歴史資源については「あまり/全く知らない」が「46%/19%」ですが、関心度を尋ねると「とても/まあまあ関心fiある」 が「6%/48%」。自然資源についても「あまり/全く知らない」が「 44%/10%」ですが、関心度を尋ねると「とても/まあまあ関心fiある」が「11%/54%」という結果です。総じて「あまり知らないが、まあまあ関心はある」という傾向が見え、上記【6】の結果ともつながりがみえてきます。

駅西エリアの寺社。小山地区 基礎資料(風土生調査報告書)「II 踏査および文献調査による報告」より

農業・工業・商業のバランスが取れていて住みやすいが、 
突出した自慢できるものがないと感じる
——アンケート【6】のコメントより

観晃橋(かんこうばし)から思川下流域をみた風景。
小山地区 基礎資料(風土生調査報告書)「II 踏査および文献調査による報告」より

選択肢以外のその他のご意見としては、このようなものがありました。
◎夏の花火大会 ◎田中正造の生きざま ◎コアな店 ◎白鷗大学 ◎坂が少なく平坦な土地 ◎災害が少ない地域 ◎都会過ぎず、田舎でも無い

4-4 無くしたい、解消したい、小山地区の困りごと

アンケートの設問【5】で「無くしたい、解消したい、解決したい困りごとは、何でしょうか?」と問い、聞き取りをもとに用意した選択肢から3つを選んでもらいました

無くしたい困りごととしては、ゴミの問題が最大の困りごとであるという結果になっています。年代別の特徴的な傾向としては、70代以上の層のみ、最多であったゴミ問題に次いで、「地域でのコミュニケーションの不足」が2番目にあがっています。
ゴミの問題については、増えている外国籍の住民の方々や、学生などの単身者、深夜まで営業する飲食店などにマナーやルールを理解してもらうことの困難さも語られましたが、その一方で、アンケートの自由記述では、下記のように「共生」を考えるコメントが一定数見られます。(参照:アンケート集計報告書P54)

◎外国の方や若者に対して、みんなが住みやすい地域づくりの為の指導や資料を配布してほしい。◎たとえ、マンション・アパート住まいであっても、近所付き合いの出来る街に ◎外国人住民との共生、多様性を受容する社会に

5|小山地区から、小山市域全体の将来像への視点

次に、アンケート集計結果より、「20年後、30年後の小山市の望ましい都市環境のあり方について」尋ねた【8】の結果を紹介します。例示した小山市の将来像7項目について、それぞれ「そう望む・どちらかと言えば望む・どちらかと言えば望まない・望まない・わからない」から選んでいただきました。小山地区の皆さんからの、未来の小山市への視点です。

7項目の全文は、以下の通り。(A)商業・工業が発展し、工業団地も増え経済的な成長や活力が重んじられている小山市(B)地域の農業が大切にされ、地産地消が進み、市域内の食料自給率が上がっている小山市(C)環境保全型の農業によって自然環境も良好に保たれ、コウノトリも増えている小山市(D)空き地や平地林などに新しい宅地開発が進み、定住する若い世代や移住者が増える小山市(E)空き家の改修や利活用が進み、あるものを大切にした住宅整備やまちづくりが進む小山市(F)公共交通機関の整備や、徒歩や自転車で安全・快適に移動できるまちづくりが進む小山市(G)車社会に対応して、駐車場やバイパスの整備など、車での移動が快適になる小山市
 

現状で住みやすい地域なので、
これ以上の開発は望まず、
緑をとにかく増やしてほしいです
——アンケート【7】自由記述より

積極的開発より、あるものや農業を大切にした小山市に
大きな差異が出たわけではありませんが、「そう望む/どちらかと言えば望む」を選んだ人の割合で、(A)~(G)の結果を比較すると、総じて「商業・工業が発展し経済的に発展すること・平地林や空き地に宅地造成を進めること」より、「農業・環境保全を大切にすること・空き家などあるものの利活用をすること」への支持・共感が高い傾向にあります。これは、先に調査を終えている、田園環境が広がる豊田地区とほぼ同様の結果になっています。
問【7】の自由記述に寄せられた都市環境のあり方についてのご意見は、主に次の5 つに分類できました。①自然環境や気候変動等について ②田園環境と都市環境の調和・連携について ③開発、都市計画、都市部の生活環境について ④農業について ⑤移動や交通の利便性について
ご意見やコメントの全文は、アンケート集計報告書P 44~P61に掲載しています。

6|田園環境と都市環境の調和のとれた持続可能なまちづくりへ

最後に、アンケート【8】の自由記述や聞き取り調査で語られた、「こうなったらいいな!」「こんなまちをめざそう!」というご意見から、田園環境と都市環境の調和や持続可能性につながる内容の一部を紹介します。

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  • 小山地区・風土性調査報告書「基礎資料・完全版」(A4サイズ・全83ページ)は、こちらからPDFでお読みいただけます。
  • 小山地区「アンケート調査 集計結果 報告書」(A4サイズ・全61ページ)は、こちらからPDFでお読みいただけます。