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未来につなぎたい大切なものは? 〜それぞれの視点で持ち寄る広場〜 未来につなぎたい大切なものは? 〜それぞれの視点で持ち寄る広場〜

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大谷南地区◆楽農への大転換_取材後記

農業の記事を書くことになった私たち取材班でしたが、この分野について深く触れたことが今までありませんでした。そのため記事を執筆するにあたり、最先端には何があるのか、小山の農業がどういう状況にあるのかなどを調べるところから始まりました。本やインターネットなどでは難しい説明ばかりで苦戦しながらも知識を吸収。より農家のリアルな声を聞きたい!と感じて、年齢がお若い山中悠輔さんと岡本修一さんのお2人に現場の取材をさせていただきました。

緑のつるが往復して伸びてできたコリンキートンネル

緑のトンネルは、映えて快適で食べやすい


1回目の取材をさせていただいた時、最初に目に入ったのは緑のトンネル。

本編でも書いたように、これはコリンキーの空中栽培でした。トンネルの中はグリーンカーテンのようになっており、とても涼しい!夏の暑い時期に取材に行きましたが、日を遮ってくれるトンネルの中はとても快適でした。電気を使わずエコに涼しくなれる、これぞ自然の納涼ですね!

そんな涼しいトンネルの中で岡本さんにおすすめの食べ方を聞くと、生でも食べられるコリンキーの良さを生かした酢漬けが良いとのこと。取材時に岡本さんが私たち学生記者全員にコリンキーの収穫体験をさせて下さり、実際に持ち帰ってきたので、自宅で早速酢漬けに調理してみました。岡本さんの言う通りとてもサッパリしていて、くせがなく非常に食べやすい!かじった瞬間「パリッ」と音を立て、シャキシャキの食感がたまらない、夏にもってこいの一品でした。

田んぼのキャビン・アテンダント


山中さんは米作りとレタス栽培の両方を行っています。田んぼの面積は現在、東京ドームおよそ3個分! 私たちも連れて行っていただきましたが、とても広くて壮観でした。

車での移動が必須の広大な田んぼ

その後、山中さんの所有するさまざまな農機も見せていただきました。

田おこし(土をかき混ぜ、空気に触れさせ土壌の栄養を活性化させる作業)や、しろかき(水の入った田んぼで田植えに備えて土を平らにする作業)をするトラクター、田植え機、稲を刈り取ったり脱穀をしたりするコンバインなど、一つ一つ説明を伺っているとーーー

「実際に乗ってみますか?」「え、いいんですか?」

学生記者のひとりが、まだ買って間もない新しいコンバインの運転席に座らせていただけることになりました!

遂に迫力満点のコンバインに試乗!

このコンバインにはキャビンといって、乗用車のように外と遮断した空間が設けられていました。これなら作業をする時に舞うホコリやチリ、虫から身を守ってくれます。雨が降った時も安心だ。

大きさにビクビクしながらよじ登ってキャビン内の運転席に座ると、前方左右にはたくさんのボタンが。難しそうな操縦ボタンはもちろんのこと、なんとエアコン操作やオーディオのボタンもあります。長時間の農作業も、快適な空間の中で音楽を聴きながらできちゃうのですね。技術の進歩、時代の進化がすごっ!

収穫は大変、包装は楽々ーーほら、レタスにも未来が


もう一つのレタス栽培の方は、年間を通して行っています。春レタスと秋レタス、手がける品種は10種類以上。採る時には腰をかがめるため、それが米作りのどの作業よりも大変なんだとか。そこはまだ、人力なんですね。

記事の本編では2054年の機械化がキーワードとなっていましたが、レタスの包装は2023年の現時点で既に機械を使用していました。機械にレタスを入れると、自動でビニール包装され、短い時間で綺麗に仕上がる仕組み。機械と手作業が、上手く組み合わされています。

機械の真ん中の穴からレタスを1個ずつ入れる

山中さんが作るレタスの特徴は、分厚くて味が濃いこと。そのため、サラダのみならず、“レタしゃぶ”や炒め物にも合うそうです。

自分で決められる。お金より、やりがい。農家の魅力にハマる人々


お2人に伺った《農家の魅力》は、「精神的ストレスが少ない」ことや、「機械化すれば高齢者でも働きやすい」こと。

山中さん「農家はマラソンみたい。例えば1日の仕事ができなかったとしても、1週間くらいで終わればいいや!という感じ。ノルマが毎日毎日あるわけではないんだよね。」

岡本さん「企業とかだと1秒を争うからね。自分でゆとりを求めている人達には、(農業は)いいと思う。今日調子悪いなら明日やろう!みたいな。こういうのに癒しを求めて来る人がいるんじゃないかな。」

農家では、1日のノルマは自分で決められるため、精神的ストレスが低いそう。今の仕事を辞めて農家を始める人が増えているのも頷けますね。

山中さんは、今年(2023年)から新しくアルバイトの雇用を始めたそうで、その中には、他の仕事で定年を迎えた60代後半の男性もいます。その方は「お金」を稼ぐより「やりがい」を求めてやって来たそうです。

機械化によって作業の負担を軽くしつつ、定年を迎えた人でも「やりがい」を感じて働くことができ、誰が働きに来ても同じ質の仕事ができるなんて、とても魅力的ですね! 若者でもやりたいと思う人が増えそうな気がします。でも正直に言うと、取材班4人とも農家に対しては重労働のイメージのほかに、専門知識や経験が必要だと今まで感じていて、アルバイトを考えたことはありませんでした…。

実はまさに、山中さんの懸念もそこにあるそう。確かに農家として食べていくのには、やはり他の仕事と同様に知識をつける必要はあります。でも今や、3Kのイメージは払拭されつつあり、アルバイトやパートなどで「誰でも農業にチャレンジできる」ようになっていくというのは、今回の取材で得た驚きでしたし、記事を読んで下さった多くの方も驚かれたのではないでしょうか。

機械化を積極的に採り入れ続ける山中さん、農業はおもしろいと思ってもらえることを追求し続ける岡本さん。2054年になっても、お2人の目指す農業の発展に限界は見えません!

(白鴎大学メディア実践ゼミ 氏家綾音、岡結菜、諏訪千咲、小高明日奏)

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楽チン! 楽しい! “楽農”への大転換、挑戦中

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