01
記事制作チーム「白鴎大学地域メディア実践ゼミ」紹介(前編)「さあ、今日のゼミは盛りだくさんです。最初にみんなから何か連絡や共有したいことありますか?」
「はい。いいですか? 今、取材を進めている方からリアクションがありました。ゼミの学生さんたちが下野新聞に書いている記事を読んだよって。こんないい記事を書いているんですね、と伝えていただきました」
「おお、それはいいことだね。嬉しいことだけど、ひとつあらためて確認しておきましょう。僕たちが目指したいのは、学生でも書けた、ではなくて、学生だから書けた、という記事だよね。これからも、そこを目指していきましょう」
.
多様な視点を持ちより小山市の未来を考えていくウェブマガジンに、未来に生きる当事者の視点で若い世代だから書ける記事を書いてほしい!と、取材&執筆での参加をお願いしたのは、J R小山駅東口に本キャンパスがある白鴎大学経営学部メディア実践ゼミの皆さん。
「学生だからこそ書ける記事づくりを目指そう」と語りかけるのは、白鴎大学特任教授の下村健一先生です。最初に紹介した先生と学生の対話は、7月14日に「おやまアサッテ広場編集部」で参加させていただいたゼミの始まりのひとコマでした。
編集部がメディア実践ゼミを知ったのは、下野新聞に掲載されている「学生記者が行く 県南いいね散歩」の記事がきっかけでした。学生が取材をして記事を書き、メディアで発信するという取組みは少なくはありませんが、「県南いいね散歩」の記事には、構成や文章のクォリティの高さと、視点の柔らかさや豊かさを感じます。そんな記事を支えるのは、下村先生の、学生たちへの自主性や気づきを尊重しながら対話を重ね導いていく指導スタイルなのだと、ゼミに参加させていただき理解しました。
その日のゼミでは、担当する学生チームが作成した記事の草稿を全員で推敲する時間がありました。各自のスマホの画面に共有されている草稿を見ながら、下村先生の「何か疑問や違和感を感じた箇所はありますか? 理屈でなくて感覚的な違和感も大切にして」という呼びかけに、次々に声が上がります。提示された疑問や意見にも、先生が答えをすぐに用意するのではなく、学生同士で意見を交わし、最終的には、担当者が修正の方向性を考え、それを共有して、次の話題へと進みます。
また、ゼミでは、下野新聞での連載の他に、足利市の(有)みにむ発行の月刊『渡良瀬通信』にも『足利100年カルタ』という実践の場を持っています。このどちらも、先生がお膳立てしたのではなく、学生たちが自ら先方にプレゼンをして話を進めたとのことです。
今回の「おやまアサッテ広場」への参加も、下村先生は学生たちに検討を委ね、ゼミ生(4年生10名・3年生5名)全員で話し合い、参加を決めてくれました。週1回のゼミでは、2つの連載だけでも大変ですが、依頼を受けてくれたのには2つの理由があるそうです。紙媒体ではなく初めてのウェブサイトの制作・運営に参加できること。そして、せっかく小山市の大学に通っていても(県内各地や埼玉県などからの通学者が多いそうです)、コロナ禍でのリモート授業が続き小山市を知る機会があまりつくれていなかったことから、まちを知る機会としてやってみたい!ということ。なるほど、ありがとうございます!
2つ目の理由を受けて、小山市総合政策課の高橋係長から小山市の概要と「田園環境都市おやま」のまちづくりの考え方について、ゼミの時間にお話をさせていただきました。
「田園環境都市おやま」のまちづくりは、フォアキャスティング(現在を始点に未来を探る手法)ではなく、バックキャスティング(目指したい未来像を描き、そこへの道筋を未来から現在へと遡って考える手法)で進めるまちづくり。そんな説明に対して、下村先生は、ご自身の実践をひいて、ゼミ生のみんなに(私たちにも!)とても参考になる話をしてくださいました。
「バックキャスティングという考え方は、みんなは初めて聞く言葉かもしれないけれど、大切なことですね。福島県の小学校で僕が行った授業のことを話します。2011年の東日本大震災で、東京電力の福島第一発電所の爆発事故があったよね。避難区域になった富岡町の小学生の親の会から僕のところに相談がありました。『子どもたちが将来の夢を描けなくなった』と。気持ちが前を向くように、どうにかサポートできないかと僕も頭を捻って考えたのが『架空同窓会』という授業。六年生の前で、黒板に「31〜32歳」と書く。『20年後、この年齢になったみんなで同窓会を始めるよ。さあ、みんな最近、どうしてる?』って、ひとりひとりに質問して近況報告をしてもらいます。子どもたちは、未来の自分のことをアドリブで語り始めます。次に、その未来の自分の立場で、そこに至る道を振り返りながら、自分の人生をつくっていけるように、質問を重ねていくんです。すると何歳でこう考えて、何歳でこんなことを始めて・・・って、どんどん出てくる。それを黒板に書き込んでいくと、面白いように子ども同士のエピソードに関わり合いができて、つながっていくんです。バックキャスティングの手法で、未来の自分とそこに続く人生を組み立てみる。そんなアクティブラーニングの授業です」
.
富岡町での『架空同窓会』については、東京や四国の小学生との実践の記録とあわせて、下村先生の著書『想像力のスィッチを入れよう』にまとめられています。本ウェブマガジン『おやまの本棚』で紹介していますので、ぜひ、こちらもお読みください。>>おやまの本棚01
さて、ゼミ生の皆さんは、小山市で、地域や人との出会いを通して、どんな未来を描き、そこから遡りながら、何を見出し、どんなことを感じで、私たちに伝えてくれるでしょうか。本記事の後編では、ゼミ生の皆さんが考えた取材の基本的なテーマと、初回の記事を担当してくれる3名を紹介します。
>>後編
(おやまアサッテ広場編集部)
—————
参考リンク
●メディア実践ゼミが取材・執筆をになっている記事のバックナンバー
下野新聞で連載中の『学生記者が行く 県南いいね散歩』
https://hakuoh.jp/media/314
月刊『渡良瀬通信』で連載中の『足利100年カルタ』
https://hakuoh.jp/media/321
●ゼミのインスタグラムshimoseminar
『県南いいね散歩』の記事からこぼれた話題などを投稿
https://www.instagram.com/shimoseminar/