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小山でも浸透してきた実感、オーガニックな食への意識
こんにちは。立堀です。
今回は、前回の続きで、2007年9月に小山でパン屋を始めてからのことを書いてみます。最初のお店は、今と同じ小山地区ですが、豊田地区に近くて目の前に田んぼが広がる場所でした。実家の電気屋の倉庫を改装してお店にしたんです。厨房機器は全部中古、内装でも廃材をパッチワークのように貼り付けたり、実家で使っていた建具を使ったり、いまあるものでお店を作っていきました。お金がなかったのはもちろんですが、私が新しく始めることで、無駄なものやゴミが出ることをとにかく避けたいという気持ちがありました。前回のコラムで書いた修行時代のスターネットで働いていた同僚が大工になっていたので、彼と相談しながらつくって行きました。
その店で5年、そして夫の畳屋がある城山町に移転して今年でちょうど10年経ちました。今の店も友人の大工さんに木をふんだんに用いて作ってもらいました。
パン屋を始めた時から、そして今でも変わらずに大切にしているコンセプトは3つあります。オーガニックのものを使う、小麦は国産のみを使う、地元の近くでとれたものを使う・・・です。
なるべく素材の味を生かせるよう、小麦は石臼でひき、パン生地は、余分なものを入れずに引き算で作るように心がけています。数年前から畑を借りて、ジャガイモやさつまいも 、小豆などを作っていて、うまく収穫できたときは、パンに使ったりしています。
このような考えなので、菓子パンはなく、ハード系と言われる固めのパンばかりです。15年前は、そんな品揃えに、お客さんの印象は、珍しいというか変わったパン屋さんというものだったと思います。「クリームパンやカレーパンは無いんですか?」「どうして毎日営業しないんですか?」とよく聞かれ、カンパーニュなどはいつも売れ残っていましたね。
この数年では、お店に来てくださるお客さんの中には、食に気を使っている方も増えてきています。城山町に移って、コロナ感染が広がる前までは、店の入り口に黒板を置いて「原材料は○○、小麦は○○」とこだわりを書いていたんです。でも、次第に、考え直すようになって、黒板を置くのをやめたんです。
こういう表示をすると、食に気を使っているとかオーガニックな食べ物しか買わない人しか来ないんじゃないか? そうじゃない人にも、たまたま通りかかってパンを買ってみたら、結果おいしかった、そしてオーガニックな食べ物に興味を持ってもらうきっかけになった・・・、そんなことの方が、間口が広くなって良いのではないか?と思うようになったんです。
それから2020年、コロナ感染が広がってから、学校も休校になったりして、その影響でスーパーから小麦粉とかホットケーキミックス等が品切れになり、うちのパン屋もかなり行列ができる日が続きました。作っても作っても足りないくらいで。外に行けないけどパンは食べたい、と新しいお客さまが増えました。コロナで自宅にいる時間が長くなった分、食べ物や暮らし方に真摯に向き合うようになった人が増えた気がします。
それから、お客様との会話からも、小山でも徐々にオーガニックな食の大切さが浸透してきたという実感も、かなりあります。これからも、地域で採れるものでのオーガニックなパン作りを通して、食の大切さ、持続可能な暮らし方の大切さを追求しながら、伝えていけたらと思います。
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立堀さんのコラム1回目>こちら
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