43
田舎と都会を行ったり来たり私が好きな、小山の景観
はじめに、私が小山で一番好きな景色をご紹介します。
The 関東平野という田園景観の奥には小山市街地や、その更に奥には筑波山が見えます。小山市の郊外にお住いの方には見慣れた景色でしょうが、東京から移住した私が最初に感じたのは“空が広い”ということでした。今の季節は田んぼに降りた霜で朝は真っ白ですが、春には満開のサクラにお花見散歩する人、夏には水田いっぱいの緑と農作業をする人々、秋には黄金色の稲穂に赤とんぼなど、季節によって多様な景観を見せてくれます。
編集部からの紹介記事(click)でご紹介いただきましたが、私は幼少期から社会人3年目まで東京で育ち、暮らしました。品川区にある「戸越銀座」という商店街の近くの下町育ちです。子どものころから空を眺めるのが好きだったのですが、東京では電線や家の屋根、団地やアパートで遮られてしまい、ここまで広大な空を見つけることはなかなか難しいのです。
そんな貴重な景色が、私の住んでいる豊田地区では家から30秒歩けばそこかしこに広がっています。
豊田地区の田園景観
豊田地区は1,100年以上続くとされる田園地帯です。近隣にある「美田地区の田園景観」はおやま百景にも選ばれていて、春から秋にかけては稲作が、秋からまた春にかけては麦作が盛んに行われています。
田んぼではお米や小麦・ビール麦・ハト麦といった作物が育てられ、私たちの食を支えています。一方で、田んぼの恩恵はそれだけではありません。田んぼの中や畦畔には、カエルやドジョウなどの水生生物をはじめ、バッタやトンボ、カモやサギ、イタチといった多様な生物が集まり、生態系を成しています。
また、田んぼと言えば「田植え」のイメージが強いと思いますが、当然、植えるだけでお米が出来るわけではありません。春前からの用水路の泥上げや代搔き、草刈等の作業に、いざ田植えの時期になると地域の人達や親戚が集まって協力しながら農作業をします。そうした人々の営みや交流も、田んぼを中心に形成されている文化資産なのだと、私は考えています。
田んぼの景色にただただ癒されるのも気持ちが良いのですが、少し想像を働かせてみると、そこに隠れている生態系としての価値、文化・伝統としての価値が見えてきます。
この田園景観を、どう残していくか?
私はたまたま妻の実家が小山で、外から移住・婿入りした立場ですが、将来的には妻の実家の農地を継ぐことが決まっています。「継ぐ」と言っても継承の形は様々ですが、どんな形であれこの田園景観は子どもたち、孫たちの世代に残したいなと強く思っています。農業もまだ休日に手伝う程度の未熟な見習いですが、東京での本業にも邁進しながら、どうやったら長期的に農業を継続できるか、模索の日々です。
次の記事では、農業や田園景観をどう繋いでいくか、東京での仕事と小山での農業をやりながら考えてきたことをまとめたいと思います。
————————————————————
塚田康弘さん関連記事
編集部からの紹介記事>こちら