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生物多様性調査レポート・6
「哺乳類、爬虫類、両生類」編

みなさん、はじめまして。景域計画の古賀と申します。今回は「生物多様性基礎調査」(小山市内の動植物調査)の調査結果から小山市内の哺乳類、爬虫類、両生類についてご紹介したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

市内の公園や神社の森、思川などの川沿いの湿地などいろいろな環境タイプの14地点での調査のほか、「レッドデータブックとちぎ2018」などの文献から過去の記録も調査しました。その結果、哺乳類が11種、爬虫類が14種、両生類が10種確認されました(外来種を含む)。その中でも、身近でありながら減少しつつある生きものを、ご紹介したいと思います。

調査は2月、4月、8月に実施しました。2月はニホンアカガエルやヤマアカガエルの繁殖期にあたり、調査ではニホンアカガエルの卵塊(らんかい)が確認されました。ニホンアカガエルは、まだ寒さの残る早春に水田や湿地などの浅い止水域で卵を産みます。あまりにも早い時期に繁殖期を迎えるため、産卵の後に再び冬眠します。早い時期に繁殖するのは、ヘビや水生昆虫による補食を避けるためや、他のカエルとの競合を避けるためと考えられています。この記事が公開されている3月中旬ごろには小さなオタマジャクシが泳ぎ始めている頃でしょう。

ニホンアカガエルの卵塊   

カエルは水辺に生息するイメージが強いかもしれませんが、ニホンアカガエルは、水の中に入ることはほとんどなく、草地や樹林の地面で暮らしています。ニホンアカガエルは、木や壁を登るのは苦手で、生息には繁殖地となる水田や湿地と、草地や樹林を歩いて行き来できる環境が必要です。このような環境の減少により、ニホンアカガエルは、特に栃木県南部で著しく減少しており、「レッドデータブックとちぎ2018」で準絶滅危惧種に指定されています。

4月、8月の調査では、小山市の自然環境を代表する思川と鬼怒川、その周辺の水田などの水辺の環境を好む生きものが中心に確認されました。

トウキョウダルマガエルは、主に水田とその周辺に生息しますが、今回の調査では水田から少し離れた公園でも確認されています。4~7月頃に「ンゲゲゲゲ」と聞こえる鳴き声を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

ヤマカガシは、カエルや魚などを食べ、水田などの水辺を中心に樹林や草地など多様な環境に生息します。口の奥にある毒牙と首の後ろに毒をもちますが、性質はおとなしく、人がむやみに手を出さなければ、危険はありません。

トウキョウダルマガエル
ヤマカガシ

ヒガシニホントカゲは、樹林から市街地まで広く生息していますが、やや湿った草地や石垣といった生息環境・産卵適地の消失により減少しているようです。栃木県ではヒガシニホントカゲをカナヘビ、ニホンカナヘビをトカゲと呼ぶことがあるようです。ヒガシニホントカゲの体表はつやがあり、体形はずんぐりしていますが、ニホンカナヘビの体表はかさついた感じで、体形は細長いなどの特徴があります。また、ヒガシニホントカゲの幼体は、鮮やかな青い尾に、黒地に金色の線が入る美しい色合いをしています。

ヒガシニホントカゲ
ヒガシニホントカゲの幼体
ニホンカナヘビ

河川敷では希少な哺乳類も確認されています。

カヤネズミは、頭胴長(頭から尾のつけ根まで)5~8cm、体重7~14gの日本最小のネズミです。草丈の高い草地に生息し、イネ科の植物の葉などを利用して、巧みに球状の巣をつくります。調査では、この球巣が鬼怒川の河川敷で確認されましたが、水田などにも生息することから、もしかしたら皆さんの身近なところでひっそりと暮らしているかもしれません。

ニホンイタチは、肢が短く、細長い体格が目立つ肉食の哺乳類です。頭胴長はオスで約30~37cm、メスで約20~22cmと、オスが1.5倍の大きさであることが知られています。河川敷や水田に生息し、ネズミ類から鳥類、甲殻類など様々な餌を食べます。

カヤネズミの巣球
ニホンイタチ

今回ご紹介した多くの生きものが、「レッドデータブックとちぎ2018」に記載されており、残念ながら県内でその数を減らしています。これらの生きものたちが、いつまでも身近な存在であり続けられるよう、まずは彼らの事を知っていただけたらと思います。


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