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生物多様性調査レポート・4
河川敷の鳥たち

みなさん、はじめまして。「生物多様性基礎調査」(小山市内の動植物調査)で鳥類を担当している中村と申します。今回は調査の際に観察した小山市内の鳥類ついてご紹介したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

小山市の自然環境の特徴の一つとして、市の中央部を流れる思川と、東側を流れる鬼怒川という河川の存在があると思います。今回は、これらの河川沿いで見られた鳥たちをご紹介したいと思います。

鬼怒川の様子

調査は鳥類の繁殖期にあたる4月下旬から5月に行いました。その頃の河川沿いの草地では様々な鳥たちの声が聞こえてきます。

オオヨシキリは薄茶色の地味な姿ですが、「ギョギョシ!ギョギョシ!ギョギョシ!」とカエルのような賑やかな声が特徴です。ヨシの先の方にとまりながら囀る姿があちこちで観察できました。

セッカはスズメよりもさらに小さい小鳥です。「ヒッ、ヒッ、ヒッ」と鳴きながら空中に舞い上がり、「ヂャッ、ヂャッ、ヂャッ」と鳴きながら草原に降りてくる特殊な飛び方が特徴です。この飛び方はオスがメスに求愛するために行います。この鳥は巣を作る際にクモの糸を使うことでも知られています。

ヒバリは畑や水田などを好む鳥ですが、河川沿いの開けた環境でも見られます。空高く飛びながら長く複雑に囀るのが特徴です。市内の水田や畑でも確認していますので、声を聞いたことのある方も多いかもしれません。

オオヨシキリ
セッカ
ヒバリ

草はらの中には日本の国の鳥(国鳥)であるキジも潜んでいます。姿は見つけにくいですが、よく響く「ケーーン」という声が聞こえてきます。桃太郎のお話にもお供として登場する昔からおなじみですね。オスは赤い顔、緑色の体、長い尾羽の美しい鳥です。

キジのオス(畑の端に姿をみせてくれました)

鳥類は河原でも見られます。「千鳥足」の語源になったチドリの仲間で、イカルチドリという鳥が思川・鬼怒川の両河川で確認できました。この鳥は小石や礫(れき)で覆われた河原に簡単なくぼみを作り産卵します。卵はむき出しになって心配になりますが、表面のまだら模様が絶妙な保護色になって溶け込んでしまいます。恐らく両河川で繁殖しているのだと思われます。同じチドリの仲間のコチドリは、市内の畑や田んぼが広がる場所で見られました。

イカルチドリ
コチドリ

思川の河原では、市の鳥であるセグロセキレイが見られました。幼鳥の姿も見られたので、近くで繁殖したのだと思われます。この鳥は市内の大沼や畑、水田などでも見られました。皆さんも見かける機会があるかもしれません。

セグロセキレイの親鳥
セグロセキレイの幼鳥

川面では「水辺の宝石」とも呼ばれるカワセミも鬼怒川で観察できました(残念ながら写真は撮れませんでした)。近年は街中でも姿を見かけるようになりましたが、美しい鳥が市内でも観察できるのは嬉しいことですね。

今回の調査中、鬼怒川の上空を珍しい鳥が飛びました。サシバというタカの仲間です。「環境省レッドリスト2020」、「2018レッドデータブックとちぎ」の絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。市内では、繁殖できるまとまった里山環境が少なくなっています。調査で確認されたのは移動途中の個体だと思われます。今後サシバの繁殖に適した里山環境が保全されて、多くのサシバが通過せず、繁殖のために降り立ってくれることを願っています。         

サシバ(鬼怒川上空を舞っていました)

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