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生物多様性調査レポート・2小山思いの森の植物たち
小山市「生物多様性おやま行動計画」の改定のためお手伝いをさせていただいている景域計画の湯本です。アサッテ広場では、弊社で担当している「生物多様性基礎調査」(小山市内の動植物調査)の結果から、みなさまに小山市内の動植物についてご紹介しています。
小山市内の動植物調査は、市内の公園や神社の森、思川などの川沿いの湿地などいろいろな環境タイプの14地点でどのような動植物がいるのか、現地で種類を記録するというものです。
連載2回目となる今回は、その1つ神鳥谷(ひととのや)の小山思いの森の植物についてご紹介したいと思います。
小山思いの森は、市民病院などの開発の折に、もともとあった樹林の一部が残されており、ウォーキングコースとして整備されています。樹林内にはディスクゴルフのコースなどもあり小山市民の自然とのふれあいの場となっています。
今回弊社で実施した調査範囲は小山市民病院の南側の樹林と周りの草地です。
こちらの樹林はクヌギやコナラなどを中心とした樹林で、薪をとったり、堆肥をつくるなどとして使われていたかつての薪炭林(しんたんりん)の面影を見ることができます。
樹林には、コナラやクヌギのほかにクリ、アカマツ、ウワミズザクラ、エゴノキなどの高木、ゴンズイやガマズミ、イヌツゲ、ヤマハギなどの低木、ジャノヒゲやミツバアケビ、リンドウ、コバギボウシなどの草本が生育しています。草地には、シバ、ヘビイチゴ、ヨモギ、ヤハズソウなどの草本が生育しています。
絶滅危惧種としては、春にクチナシグサ、キンラン、秋にはコイヌガラシが確認されています。
クチナシグサの和名の由来は、萼(がく)に包まれた果実の形がクチナシの果実に似ていることによるそうです。クチナシグサは半寄生植物で、茎は地をはい、5月頃に淡い紅色の花が咲きます。
「2018レッドデータブックとちぎ」によると、栃木県では準絶滅危惧に指定されています。生育環境はコナラ・クヌギなどの雑木林で、草刈りと落ち葉かきが行われ地面が明るくやや乾いた環境や林縁の草地です。絶滅危惧種となった理由としては、こういった環境が手入れがされずに藪になったり、林内が暗くなったりして減少しています。ご存じの方も多いと思いますが、絶滅危惧種であるキンランも同様の雑木林に生育する植物です。
思いの森は、ウォーキングコースがあるなど利用の面からも管理がよくされているのでこういった植物が残っているのかもしれません。
クチナシグサは、思いの森の林縁で観察できます。春に地面近くに小さな花をたくさん見つけることができるかもしれません。
一方コイヌガラシは「2018レッドデータブックとちぎ」では要注目、「環境省レッドリスト2020」では準絶滅危惧に指定されているのですが、栃木県南部の河岸、湿地、休耕田、畔などに比較的ふつうに生育しているようです。現在の思いの森には特に湿地や休耕田はないのですが、樹林のまわりの窪地で確認されています。ここは大雨の後は水が溜まり湿地のようになるところです。
かつての地形図では、思いの森周辺が樹林となっており、現在の市民病院の駐車場付近は水田として利用されていました。コイヌガラシが確認された窪地はかつて水田の畔であったのかもしれません。
こういったかつての里山の面影を残した樹林や草地で、かつての田園風景を思い浮かべながらウォーキングしてみてはいかがでしょうか。
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