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生物多様性調査レポート・1城東公園の植物たち
みなさん、はじめまして。景域計画の湯本と申します。弊社では昨年度から「生物多様性おやま行動計画」の改定のお手伝いをさせていただいております。
今月より来年3月まで月に1回程度、この「おやまアサッテ広場」にコラムを書かせていただくことになりました。
アサッテ広場では弊社で担当しています「生物多様性基礎調査」(小山市内の動植物調査)の結果から、みなさまに小山市内の動植物についてご紹介できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
小山市内の動植物調査ですが、市内の公園や神社の森、思川などの川沿いの湿地などいろいろな環境タイプの14地点でどのような動植物がいるのか、現地で種類を記録するといった調査を実施しております。
今回は、まちなかの公園である城東公園のレポートです。
まわりは道路が通っていたり、図書館や広場があったりとアクセスも良く、利用されている方も多いと思います。
この公園には絶滅危惧種が生育しています。ご存じの方も多くいらっしゃいますでしょうか。看板もありますね。キンランとギンランが生育しています。
キンランは、「環境省レッドリスト2020」の絶滅危惧Ⅱ類、キンラン、ギンランとも「2018レッドデータブックとちぎ」の準絶滅危惧に指定されています。絶滅しそうな植物が都市部の比較的人が利用している公園にたくさんあり、不思議な光景となっています。
キンランやギンランは、ランの仲間で、生育に必要な栄養源を光合成と、コナラなどの樹木と共生関係にある菌根菌(きんこんきん)から得ています。キンランと樹木と菌の3者のバランスが保たれている必要があります。樹木と菌根菌がそろわないといけないので、植木鉢などでは育てることが難しい植物です。
「2018レッドデータブックとちぎ」によると、キンランは、「かつては落葉広葉樹を中心とした平地林や里山にふつうに生育していたと思われるが、現在は手入れが行き届いて半日陰となる落葉広葉樹林に少数が見られる」と書かれています。
落葉広葉樹を中心とした平地林とは、かつては燃料である薪として利用されていたクヌギやコナラを中心とした林で、カブトムシやクワガタをとりに行くような林です。
薪をとるために定期的に伐採したり、人が下草刈りなどの手入れを行ってきたため、キンランにはちょうどいい明るい林となっていたのが、近年は薪を使うこともなくなり、林の手入れを行うことが少なくなってきて、キンランも絶滅の危機に瀕しているということです。これまでわたしたちとともに暮らしてきた里山の多くの生きものが、同じような状況となっています。
この城東公園の明治時代の地形図を見ると広葉樹林になっており、周囲は水田となっています。樹林と水田とセットで里山の原風景として思い浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。
現在の城東公園は、周辺の水田はなくなってしまいましたが、公園に一部の樹林が残され、キンランやギンランもそこで生き残ってきたのでしょうか。
4月下旬から5月の上旬にキンランは黄色の花をギンランは白い花を咲かせます。城東公園はたくさんの株があるのでお花見ができそうです。
キンランは、市内の小山思いの森など他の場所でも見ることができます。
このようなキンランやギンランを見ながら、かつての里山の雑木林や、公園内の樹林のことを少しでも感じていただければ幸いです。
みなさんが利用される身近な公園にすんでいる生きものたちとの出会いを楽しんでいただけたらと思います。
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