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おやまビジョン市民会議 おやまビジョン市民会議
市と市民でつくる「おやま市民ビジョン会議」シリーズ セミナー&ワークショップ&報告会 開催レポート 市と市民でつくる「おやま市民ビジョン会議」シリーズ セミナー&ワークショップ&報告会 開催レポート

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2024/2/2開催:おやま市民ビジョン会議シリーズ特別編「ファーマーズミーティング」レポート

今回は、特別編として2月に開催した「市域全地区の農業事業者の方が集まり語り合う、ファーマーズミーティング」の報告です。

1|企画の背景
これまでに実施した地区の風土性調査の結果などから、未来ビジョン策定において「小山市の農業や田園地帯」が鍵になると言う方向性が見えてきています。そこでは、都市部や非農家の市民が果たす役割も重要になってくるはずですが、まずは、農業従事者の方達が、職員と一緒に、地区を超えて語り合う機会の創出が重要!と、ビジョン策定事業の担当である田園環境都市推進課と農政課の共同で、「ファーマーズミーティング」を実施する運びとなりました。

2|当日のプログラム
ほぼ全地区から、法人として農業をやっていらっしゃる方、JA青年部所属の方、4Hクラブ所属の方、新規就農者の方など、18名にお集まりいただき、さらに、おやま市民ビジョン会議の委員で農業従事者である2名の方を加え、20名で、グループに分かれて意見交換を行いました。プログラムは、以下のとおりです。
1:農政課より小山市の農業の実情について
2:田園環境都市推進課よりクラインガルテンについて 
3:風景社より風土性調査の報告(農業に関わる内容)
4:調査での市民(農家/非農家)の声をもとにワークショップ(グループディスカッション)  
5:市長コメント

このレポートでは、参加者の方に事前に回答いただいたアンケートの結果、ワークショップの内容、グループディスカッションの発表内容、浅野市長のコメントを掲載します。

3|事前アンケートの結果
参加者の方には、事前に、ネット上での回答で質問にお答えいただきました。皆さんお忙しいこともあり、回答は11名と少なめでしたが、1つの参考として示します。

複数回答可・選択肢全文
①通勤時間が⻑くない、通勤電車に乗らなくて良い ②会社からのノルマや指示でなく、自分の計画で動けるところ ③日本の食糧安全保障に貢献している誇りがある ④消費者に美味しい農産物を届けている喜びがある ⑤自然環境や生き物の環境にいる時間が⻑い ⑥やり方次第では、収入が上がっていく経営の面白さ ⑦嫌な上司や同僚と毎日顔を合わせなくて良い
その他のコメント
質問2に関連する。やり方次第で収入は上がるが、どこまでやるかのライン引きが難しい。(時間の制約)page2image3293760
複数回答可・選択肢全文
①気候や天気に左右され、自分の力ではどうすることもできないことがあること ②農業機械、資材、飼料、肥料など経費が高くつくこと ③アルバイトなどを雇いたくても、必要な時期などの⻑期見通しが立てにくいこと ④アルバイトなどを雇いたくても、人件費が捻出しにくいこと ⑤良い売り先に巡り合えないこと ⑥田畑と、その周辺の「草刈り」「除草」や、環境整備の大変さ ⑦田畑の近くの住宅地の住人の理解が得られないこと(例・コンバインの音への苦情) ⑧収益の問題(作れば作るほど、経費が嵩む赤字になりそう) ⑨収益の問題(家族で食べていくにで精一杯で余裕がない) ⑩収益の問題(新しいチャレンジをしたくても設備投資などの資金がない) ⑪ 国の政策や方針に振り回されること
選択肢3全文
①よく知っている ②まあまあ知っている ③宣言が出されたことだけは知っている(趣旨や内容は知らない)  ④(このアンケートで)初めて知った!

4|ワークショップ(グループディスカッション)
風土性調査の聞き取りで語られた、非農家の市民の声、農業従事者の声を紹介し、それをもとに作成したカードを、各グループに配布。「都市部と農村部、農家と非農家の関係をどうつなぐか」という大テーマのもと、各グループで、話し合いたい内容が書かれた「カード」を選んでもらい、それを起点にグループディスカッションを行いました。初めに、進行のためのスライドの一部を掲載し、次に「カード」を掲載します。

5|各グループが選んだカードと発表内容
限られた時間でしたが、どのグループも、深いところまで踏み込んだ意見交換がなされていました。代表の方の発表内容を、録音の書き起こしで掲載します。

A班:消費者とのつながりの可能性について
ディスカッションのテーマに選んだカードとディスカッションの記録

聞き取り調査でのコメントで作られたカードの意図をちょっと考えたんですけれど、農業をやっている人が消費者とつながりたい。そのための方法はどういう方法なのかということがテーマだと思ったのですが。では、農業者は、なんのために消費者とつながりたいのかなというふうに最初に考えて。

ものの価値というのは2種類あると思うんですけど、一つは交換できる価値。もう一つは交換できない、自分だけの価値。交換できる価値というのは、貨幣、お金だったりするんですけど、もう1個の交換できない価値というのは、例えば何か作って、人に食べてもらって、おいしいと言ってもらった。その経験した価値。あとは例えば、自分の大切にしている趣味の満足とか、そういう自分だけの固有の価値。それがたぶん2種類あると思うんです。交換できる価値と交換できない価値。

この質問に書いてあることは、たぶん売るだけだと満足できない。売っておいしいと言われたい。そうすると、自分にとっての満足感も上がる。そのためのイベントが欲しい。要するに、自分が作ったものをお金を払って買ってもらうだけでなくて、なおかつおいしいとか、素晴らしいとか、ありがとうとか言ってもらいたい。そのためのイベントが欲しいんだと解釈しました。

ですが、その上で、皆で話した結果、そもそもでも、農業をやっているわれわれは、そういうイベントを求めていますかねというところで、NOということ、全員、そういうイベントでわざわざ出向いていって、おいしいと言ってもらいたいかと言われたら、そこまでしたくはないかなというふうに、みんなおっしゃっていました。

なぜかなと思ったんですが、自分もそうなんですけど、そのために払うコストというか、経営を回していかなければいけないので、まずは経営が成り立つような販売をしなければならない。そのこと自体がまずハードルが高い状態にもかかわらず、おいしいと言ってもらいたいからイベントに出かけていって、一日イベントに立って、「おいしい」「あ、ありがとうございます」という経験をしたいかと言われたら、現状、農業で生計を立てている身としては、そこまでの時間的コストは払えないのではないかという結論になりました。

B班:遊休農地への県外からの進出

B班の課題としましては、遊休農地への県外からの進出を選択しました。まず、こちらで最初に話をしたのが、遊休農地の解消については、法人化や大規模化ですね、農地大規模化というものが必要というのがまず共通の認識で、ただその申請について、遊休農地の解消について、県外からの法人の進出は、いろいろ問題が出るのではないかという意見がありました。といいますのも、やはり県外からきた企業は、地元のコミュニティに根づくのが難しかったりとか、あとは利益を追求して、すぐに撤退してしまうような事例も見受けられるという問題がありました。

なので、県外から無理に法人の進出を?勧誘といいますか、招くのではなくて、地元の農家さんたちの法人化、大規模化を進めて、もともと地元に根づいてやってきた方を?地力を上げるイメージで、大規模化、法人化して、地域を発展させていくというのが望ましいのではないかという意見でした。

また、外国人の労働者の雇用についてもお話が出まして、実際のところ、外国人の労働者さんは、日本人の方を雇うよりも実際にはコストが高くなってしまう。やはり住居を持たない方がほとんどですので、住居の用意からして、いろいろとコストや手間がどうしてもかかってしまう面があって難しい。実際に今、農家さんで研修を受けている方にお話を伺うと、実際に果樹園とかで働いている方は、日本人が多いというお話でした。

あとは、農協のほうでも法人化への支援を行っているそうでして、実際に経営に困っている方についてはその相談、専門家を派遣して法人化も一つの選択肢?ですよというところで、お話をしているそうなんですけれども、ただそれもやはり実際に相談があって、初めてそのお話、情報を伝える部分があるので、そこのところはもっと積極的に能動的に情報を伝えて、法人化というものへの理解、共通認識を深めていくのが必要ではないかと。そういう意見が出ました。


C班:どこでも有機農業O K?

このグループでは、どこでも有機農業OKというテーマで話が進んでいきました。この紙に書いてあるところが、農地が空いているからといって、オーガニックを始められてしまうと、慣行でやっているこちらの農家はやりづらいですとか、オーガニックは特定地域を作ってくれないと、あちこちでやられたのではこれまでどおり?百姓ができなくなってしまうと思うというようなことが書いてあって、それをテーマに話しまして。

結論といいますか、出た意見のまとめになると、やはりちょっと有機農業をするかどうかという話は、ちょっとマイナスな意見がとても出てきました。といいますのも、実際に、まずそもそも有機農業、オーガニックビレッジ宣言をしていること自体は、みどりの食料システム戦略とかも関係していますと、宣言している小山市はいいまちだなと個人的に思うので、いいまちで農業をしているなと思うのですが。

実際にこれを農家が、僕たちがやるとなると、小規模な農家だったらまだ可能なことなのかもしれませんが、このグループは大規模で農業をやっている方もいらっしゃいますので、100ヘク、200ヘクの面積でそれができるのかどうか。実際にやったとして、その年、雑草がすごく生えてしまった。取る、草むしりの人件費もかかりますし、一回出た?ヒエが、それから2年、3年と続いてしまうという例もありますので、実際にこれを、全てというわけではないと思うのですが、大規模でやったときに、それこそこれ自体が持続可能なのかどうかというような意見が出てきました。

実際に、僕はトマト農家なので、トマトで有機栽培をしたとして、この無農薬だったリ有機栽培で頑張って育てたトマトを、はけ口と言いますか、出口がしっかり整っているかなというのが、一つ疑問点があります。

実際に今は、JAに卸させてもらっているので、作った分は出荷してお金になる現実ではあるのですけれども、小山市で作って、それをしっかりと全て作った分だけはけることができるのかという。マクロ視点でなくて、実際にまずは自分のうちの経営でしたり、家庭を守る?意識が必要になって、そういったことも含めてちょっと現実的ではないのかなというような意見が出てきましたので、報告をさせていただきます。

ただ最後に、実際これを逆にどういうふうにしたら可能にできるかなという意見も、隣接して慣行農業とオーガニック、有機農業をやるとかだと大変だと思うので、いろいろな迷惑もお互いにかかると思うので、もしやるとしたら、大きくその地域は有機でやりましょうということになったり、区画整備とかしたら、少しは周りの理解とかもあるのかなというような意見がありました。


D班:新住民からの苦情

われわれのテーマ、新住民からの苦情ということで、農地の周りに後から家が建つと、ほこりや道路にトラクターが落とす泥、農業機械の音など、苦情を言われることがある。コンバインとかでも稲刈りをやっているとうるさいとか、子どもを寝かせているのに起きてしまうとか、そういう苦情が市役所などに入ってくるということで。

昔と今の違いというのは結構あって、私が就農したころ、20年ぐらい前は、農家の人がもっといっぱいいたので、朝起きるともうエンジンの音が普通に鳴っていたのですが、そういうのが今は少し変わってきている部分を、どういうふうに対策するというか、考えればいいかなという形で話してきました。

簡単に技術的なものでいうと、例えば泥を落とさないように道路のできるだけ端を走って、トラクターの片輪だけ落として、せめて、アスファルトが最近、結構多くなってきたので、アスファルトは目立つので、そういったところに泥があまり落ちないように、そういう対策をするとか。中干しをしっかりして、圃場に入ったとき、コンバインとかが土を少し落とすとか、そういう技術的なものはもちろん大切だなと。そういった形です。

あとは畜産とかで臭いの対策とか、抑制菌剤をうまく使って、できるだけ発酵を促進して、臭いをあまり外に出さない。そういう対策は、技術的な対策ができる部分でやっていく必要があるのかなという形で、一応、技術的なものは改善の余地はあるのですが、やはり意識的なものが結構強いのかなという形で。

やはり昔と今というと、昔はわれわれ、農村地域でわれわれ、私などは特に中地区なので、ほとんど新しく入ってくる方はいないので、そういう意識はどちらかというと低いのかなという感じはするのですが、でもやはり、若い世代になるにつれて、農家から離れていく、そういった形が農村地域でも割と見受けられるので。

そうすると、われわれの20年前のときと今の時代というと、若い世代の人たちの農家に対する意識的なものがちょっと違う。要は、子どもたちが少ないので、食育に対する教育は昔と格差があるとか、単純に子どもが少なくなっているので、農業離れが進んでいるとか、そういった部分でやはり、農家をやっている家と農家でない非農家の家、農村地域でも両極端に分かれているので、その意識的なものがうまく?タッチしていない。

それをうまく、結論には至らなかったのですが、どういうふうにうまくお互いを理解し合えばいいのかというところがポイントだと。一応そういうふうな疑問が残った時点で終わりました。


6|浅野市長コメント

皆さん、どうもご苦労さまでした。今日、お集まりの方は、日ごろ、農業に携わっている方なので、もう日本の農業がすごく問題を抱えていることは十分理解されていて、その問題を抱えている農業が、農業でない、先ほど農家、非農家という言葉が出ていましたが、農業をやっていない方にどこまで理解してもらえているんだろうというところでは、たぶんかなり懐疑的なのではないかと思うんですね。

日本の農業は、日本の社会の中で数十年間冷遇され続けてきているというのが現実ですし、国の政策の中でも、本当に農業に力を入れているのかといったら、私も宇都宮大学で十数年、農業法律という非常勤講師をやっているのですが、やはりひどいなと。本当に日本という国は、農業を真剣に考えている節がどうもないぞと思っています。

そのしわ寄せが全部、地方にきているんですよね。地方がこれだけ本当に、人もいなくなってしまって、耕作放棄地が増えて、荒れてしまっているというのは、やはり日本の国の農業政策が、非常に問題なんだろうというのは間違いないと思います。

でも、このままにして50年、あと100年たって、この状況をずっと続けていったら、本当に日本という国は成り立たなくなるのだろうと思っています。ですから、ここからなんとか日本の農業を立ち直らせていかなければいけないわけですけれども、それは中央からそういうものが出てくるわけではなくて、やはり地方からどんどん突き動かしていくしかないのだろうと思います。

こうやって田園環境都市ビジョンを作ろうということで、いろいろアンケートを取ったときに、今日、皆さんの資料の中にあるように、小山地区には本当に農業を心配している人がいっぱいいるんです。その人たちと農村で本当に農業に取り組んでいる人がつながっているのかというと、なかなかつながっていなくて、市街地にいる人も農業には関心があって、車で5分、10分行けば、田んぼだったり畑だったりあるんだけれども、その人たちとどうやってつながったらいいのだろう、よく分からないから市がつないでくださいと言うんです。

私は67ですが、私の世代より上の人は、みんな農村に行けば必ず親戚がいるような世代だったんですが、今の若い子育て世代で、まちなかに住んでいる人は、農村にいっぱい親戚がいるんだという人は少なくなっているわけです。

ですから、人的なつながりも本当に弱まってしまっている中で、どうやって市街地にいる潜在的な農村ファン、農業ファンを味方にしていくのかも考えていかなければいけないわけで、先ほどコスト的にイベントに出るのはとても厳しいと、自分の経営を守らなければということをおっしゃっていました。それは間違いないのですが、ただそういう農業ファンとか農業を支える人たちを、将来的に一人でも二人でも増やしていくんだと考えたときに、そこを自分の農業の経営のコストの中に組み込むようなことも、これからはしていかなければいけないと思いますし。また行政も、本気になって農村と都市とをつなぐことをやらないといけないのかなと思っています。

本当に若い人たちが日本の農業を、というか、まずは小山の農業から、どうやっていくのか。そしてそれを、本当に日本の全体の農業を変えるための一歩というか、本当にそういう、地方が突き動かさない限り中央は変わりません。それはもう間違いないので、どうやって中央を動かしていくかということで、小山市としてもできる限りやっていきたいと思っていますし。

本当に今日、若手の職員も含めて、こうやって行政と若い農業者の方が話ができたことはすごくいいことだと思いますし、これからもそういうことを続けていけたらなと思います。