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「田園環境都市おやま」のまちづくりが目指すもの
小山市長浅野正富
田園環境都市おやまの
まちづくり
考え方と進め方について
はじめに
20年後、30年後のご自身の暮らしに、どんなイメージを持っていますか? そんな未来のことは、あらたまって考える機会もあまりありませんし、先が見えにくい時代にもなってきています。でも、だからこそ、「こうありたい」という未来のビジョンを描いて、そこに向けて一歩一歩進んでいくことは大切なことですね。まちづくりについても同じです。
小山市では、2030年の「まちの将来像」を描き、政策の長期的方向性を示した「小山市長期ビジョン」を、2014(平成26)年に策定しています。その先の2054年の小山市の姿を、市と市民の皆さんと一緒に、あらためて考えていく取り組みを今年度(令和4年度)からスタートさせています。
「こんなまちにしていこう」「こんな環境を未来の子どもたちに手渡したいね」と思い描く、30年後の2054年の市の姿を「田園環境都市ビジョン」と呼び、これから3か年をかけて、その中身?どんなビジョンを描いていくか??を市民の皆さんと一緒に考えていきます。
ビジョンづくりを
どう進めるの?
調べる・学び合う・対話する
まちづくりのビジョンとは? 未来のまちは「こうありたいね」「こんなまちにしていこう」という、実現したい未来のまちの姿です。さまざまな事業や取組みの大きな方向性を示す基盤となるものです。
ビジョンづくりとは? その未来の姿を、関わる人みんなで共有できるように、言葉や文章、イラストや図などでまとめ上げていく取組みです。
小山市では、この図のように「調べる」・「学び合う」・「対話する」を重ねながら、市民の皆様とともに、じっくりとビジョンづくりを進めます。
ビジョンは策定して終わりではなく、市の計画や事業などの基盤として活用していきますし、市内の事業所や市民の皆さんも、事業や活動の拠り所にしていただきたいものとなります。また、ビジョンそのものも検証しながら、時代や状況の変化に応じて「更新」してゆくべきものとなります。
そもそも
「田園環境都市」って?
ビジョンづくりの出発点、小山市の特性
ビジョンづくりを進めていくにあたり、その出発点としての小山市の特徴を3つあげたいと思います。
田園環境と都市環境の調和がとれた小山市
栃木県2位の人口を有し東京から新幹線で40分ほどの都市でありながら、広大な水田や麦畑などの田園環境にも恵まれています。2012年にラムサール条約に登録された渡良瀬遊水地の8%が小山市域にあり、そこでは野生復帰したコウノトリの雛の誕生が3年連続続いています(2022年現在)。農業、商工業のバランスもよく、首都圏でも有数の、田園環境を併せもつ都市、「田園環境都市おやま」と言えます。
多様な地域を大切にする小山市
周辺の町や村の合併が続き、現在の小山市になったのは昭和40年。町村制がひかれた明治22年には、小山・間々田・生井・大谷・穂積・寒川・中・豊田・桑・絹の1町9村が誕生していました。
小山市への合併以前から、各地域には固有の歴史、文化、伝統、祭り、慣習があり、現在も地域ごとの独自のまちづくりの取組みが行われています。小山市全体での「田園環境都市おやま」のまちづくりを進める上では、地域ごとの特性を生かし、尊重し、さらに、その総体としての未来の小山市を描くビジョンづくりを目指すことが大切になります。
小さな自慢がやまほどある小山市
これは、市民参加によってつくられ、令和3年度から使われている小山市シティプロモーションのキャッチコピーとロゴデザインです。「小山市は、コレ!」という大看板は無いけれど、それぞれの地域や、個々人で、自慢に思えるもの、大切に思うものや誇りに思うものは、有形無形に多様に存在していて、それらも「田園環境都市おやま」の大切な構成要素です。
地区ごとの風土性調査って?
現地調査・アンケート調査・聞き取り調査・文献調査
田園環境と都市環境のバランスの良さ、地域ごとの独自の歴史や文化、小さな自慢がたくさんあるまち。そんな小山の特性を、細やかにしっかり深掘りして調べていくのが、令和4年度から本格的にスタートしている、地区ごとの風土性調査です。その成果は市民の皆さまと共有し、意見交換を重ねていくための基礎資料として公開していきます。詳しい計画や報告はこちらのページをご覧ください。
未来ビジョンづくりは、持続可能なまちづくりの推進?
小山版SDGsの取組みへ
2015年に国連サミットで世界共通の目標として設定された「持続可能な開発目標:SDGs」の普及で、持続可能性という言葉もよく聞かれるようになっています。30年後のビジョンを考える際には、「今を生きる私たちが、その時代に生きる将来世代に何を残してあげられるか?」という「持続可能なまちづくり」の視点が不可欠です。田園環境都市ビジョンづくりの取組みは、小山市の住み良さの要因の1つ、田園環境と都市環境のバランスを今よりも崩すことなく、資源も使いすぎず、地域や暮らしの中での「大切なもの」を損なうことなく、将来世代にバトンを渡してゆく、小山版SDGsの取組みであると言えます。
田園環境と都市環境の調和を大切に考えてゆく小山市のビジョンにおいては、SDGsの17の目標の関係性を考える際に、スウェーデンのストックホルム・レジリエンス・センター所長、ヨハン・ロックストローム氏が提唱している「ウェディングケーキ・モデル」が大切な手がかりになると言えます。17の目標は、人間の経済活動に関すること、社会のあり方に関すること、環境(自然)に関することの3両域に大別されます。ウェディングケーキ・モデルでは、経済も社会も、環境(自然)を基盤として成り立っていること、つまり、環境(自然)なくしては、社会活動も経済活動も成り立たなくなるということを示しています。
環境を基盤とした、経済や社会の考え方について、小山市では、令和4年6月20日に庁内勉強会を開催しました。その映像(30分)を共有しますので、ぜひご覧になってみてください。
これまでのまちづくりと
どう違うの?
田園環境都市ビジョンの役割
これまでのまちづくりで行政においては、農業、環境、都市計画、福祉、教育などあらゆる分野で、総合計画に基づいて各種計画がつくられ、そこにはSDGsの視点も反映されています。市民参画のまちづくりとしても、地区ごとのまちづくりや、小山駅周辺地区まちづくりプランの作成が活発に進んでいます。 さらに、従来のまちづくりを一歩進めて、小山市の良さや大切にしたいものを確実に未来につないでいくには、個別の計画づくりや事業間での「連携」や「協働」、それぞれのまちづくりが進む地区間での「共有」や「学び合い」、田園部と都市部の「関係性を繋ぎ直す」ことなどが必要となります。田園環境都市ビジョンの役割はそこにあり、また、ビジョンは、小山市域全体で「総合的」に、持続可能なまちづくりを考えていくための「指針」となります。将来世代に、より良い小山市を残すために、この取り組みに、さまざまな形でご参画ください。