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自然栽培との出会いはじめまして。小山市鉢形で「木こり農園」という屋号で兼業農家をしている市川です。
私の周りには田畑が広がり、怪しい森があります。自然栽培という農法をベースに旬の野菜作りをしています。
以前は自動車整備士の仕事をしていました。好きで始めた仕事でしたが、仕事がハードだったため、心身ともに疲れきってしまい、もっと人間らしく生きたいと思うようになって、いろいろ悩んでいる時に、うちの前に広がる畑を見て「野菜作りでもやってみようかなぁ」という思いが芽生えました。
農業のことについて自分なりに学び始めた時、ある一冊の本に出会いました。11年も苦労を続けながら、「奇跡のりんご」と呼ばれる自然栽培のりんごづくりに成功した、青森の農家、木村秋則さんの本です。そこに書かれていた自然栽培に心ひかれ、ワクワクする気持ちが溢れてきました。自然に寄り添った栽培、肥料も農薬も使わない栽培、自然環境も考える、人の健康にもいい。何より美味しい。自然栽培の野菜を食べた時、野菜本来の味がしました。身体が喜んでいました。そんな野菜を育てたいと思いました。
2012年に会社を辞め、耕作放棄地となっていた祖父の畑で農園を始めました。当時、自然栽培の情報が少なく、勉強するのにとても苦労しました。少しずつ、自然栽培をやっている農家さんの情報を集め、いろいろ教えていただきました。学びがたくさんありました。
「人から学ぶのではなく、自然から学ぶことが大切だ」と言われました。自然栽培で大切なことは種づくり、土づくり、人づくり。そして自分なりに自然の中で学びながらの野菜づくりが始まりました。そうして、種づくりが特に大切だと感じました。野菜のおいしさの8割は種で決まると言われています。
本来は種から野菜を育て、野菜から種を採取し、種を育てて行くのですが、今のF1といわれる種から出来た野菜は、種が採取出来ないように品種改良されてしまっています。つまり、子孫を残せない野菜が増えているのです。そんな野菜を食べ続けたら人間にも影響が出るのではないかと感じました。人間の都合で、自然からかけ離れた野菜になってしまっています。昔から受け継がれている在来種や固定種は種採りが出来ます。何より野菜本来の味がして美味しいです。自分はなるべく自家採取をしてその種を未来へ繋いでいきたいと思いました。
そしてもちろん、土台となる土づくりも大切で、まず肥料を抜く事から始めました。種づくり、土づくりから、自然栽培の農家として農園経営を始めたのですが、やはり、はじめの頃は収入が無いので、生活がままなりませんでした。いろいろなご縁から、アルバイトを始め、先輩農家さんの作業の手伝いや、ピザ屋、建物のクリーニングなど、いろんな仕事をしました。そんな中で、知人に紹介されたのが林業の仕事でした。そして不思議な出会いから、林業の仕事へと導かれて行くのでした。(林業編へ続く…)
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